2012年12月8日土曜日

NHKラジオの「ラジオ深夜便」に出演しました。

2012128日(土)の午前4時から、「関西発ラジオ深夜便 明日へのことば」において、「今こそ三方よしの精神を」と題して、40分ほど話しました。

話の内容は、近江商人の三方よしを中心にしたものです。

近江商人を源流とする大企業は総合商社の伊藤忠商事、丸紅のほか、日本生命、ワコール、西川産業(ふとんの西川)、滋賀銀行などであり、繊維や醸造業などの企業は現在も全国に多数展開しています。なぜ一地方の商人が全国に飛躍できたのか?

その秘密は、三方よしの理念をもって商いに励んだことにあります。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしは、近江商人だからこそ、この言葉が生まれたといえます。近江商人の商いは他国への行商が中心でした。そのために、出先の人々の信頼を得ることが欠かせなかったのです。つまり自利を遠くに見すえ、相手の利益を考える真摯な姿勢がなければならなかったのです。現在の言葉でいえば顧客満足(CS)であり、人を欺く商品を扱わないことはもとより、営利を直接の目的とせず、薄利を積み重ねて子孫の長久と家業の永続を大切に考えたのです。

日本は世界に冠たる老舗企業の国です。200年以上の社歴のある企業は世界の44%を占め、断然トップであり、その源流は近江商人にあるといえます。近江商人の経営理念は日本の企業経営の基本的な考え方になっています。しかし昨今は、企業活動と関係の深い地球環境の異変や内外で企業不祥事が続発し、企業倫理と企業の社会的責任(CSR)が問われています。企業の存在自体が世のためになっていなければ、その企業に明日はないのであり、これからの企業に求められているのは、まさに現代のCSRに通底した三方よしの精神といるでしょう。

番組担当の中村宏アナウンサーの話の引き出し方の巧みさに、誘われ助けられながら、およそ以上のような内容からスタートして、話を展開しました。

もっと詳しい話を希望される方には、拙著『近江商人 三方よしに学ぶ』(ミネルヴァ書房)があります。ご一読いただければ幸いです。